英語の学習をしていると、英語の勉強方法や習得のプロセスについて、誰もが共通で疑問に思うことがあります。
「英語独習法」(今井むつみ/岩波新書)は、こうした疑問に科学的な回答を示してくれます。本書を読めば、英語学習を進める上での余計な悩みを避けることができるでしょう。ここでは、本書の読み方と重要ポイントについて説明します。
目次
「英語独習法」の読み方
「英語独習法」の著者は認知科学の専門家とのことで、「学習」の一般的理論と英語の特徴を勘案して、語彙の効果的なとらえ方などが説明されています。特に、スキーマの概念を通じてネイティブと非ネイティブの思考の違いと、その対処法が明確に説明されています。
英語力が伸びなやんでいる人にとっては、打開のヒントが得られるかもしれません。
私自身も、長年英語学習をしながら、学習法についてモヤモヤと疑問に思っていたことの多くがクリアになりました。
「英語独習法」の重要ポイント/読書メモ
私の個人用のメモです。本書を読んでいて気になった箇所のポイントをメモしました。(あくまで私自身のメモであるため、内容の信頼性については責任を持てませんのでご了承ください)
- 教えられた内容はそのまま脳に定着しない。
- 人は「無意識に選んだ情報」だけに注意を向け、期待外の情報は受け流してしまう。
- 非ネイティブにとっての英語学習は「スキーマ」が重要。無意識にアクセスする脳内の知識のシステム。外界の出来事や言語情報はスキーマを通して知覚される。
- 英語のスキーマを身につけるには、英文法の本を熟読するより、単語の意味を探究するほうが良い。
- まず単語の意味を深く調べること:その単語が使われる構文、一緒に使われる別の単語(共起語)、頻度、文脈(フォーマリティ)、多義の構造、類義語とのネットワークなどを探索すること。
- 英語の語彙の探索には、SkELL, COCA, WordNetなどのコーパス/オンラインツールを使いこなすこと。
- リスニング力をつけるには、まず語彙を身につけること。分野の語彙(スキーマ)がなければ「多聴」は意味がない。
- TOEIC/TOEFLなどのリスニング教材は、題材の分野のスキーマが働きにくく非効率。
- 英語の語彙を増やす目的では、英文の多読は役に立たず、熟読が効果的。
- 多読するなら、多くの単語の意味が分かり、たまに未知の単語の意味を推測する程度が良い。
- 映画の「熟見」も効果あり。聞き取れない単語の意味を推測しながら見ると、身につきやすい。
- 「聞き流すだけ」は無意味。
- 日本語は名詞、英語は動詞と前置詞のウェイトが高い。自然な英語を書くには、まず動詞を考える。
- 単語を使いこなす練習は、スピーキングよりもライティングが優先。
- 英語のスキーマはライティングで身につける。そうすれば、スピーキングは短期間の集中練習で上達する。
- 赤ちゃんは生後10ヶ月まではr/l を聴き分ける。
- 日本人は日本語習得過程で「必要なものにだけ注意を向ける」ため r/lの区別の注意を捨てる。
- ネイティブの音の聴き分けを身につけるには「1歳未満」「週に何度も英語母語話者と対話」が条件。
- 大人は語彙から意味を推測すれば良いので問題ない。
- 英語の語彙力は、大人のほうが伸ばしやすい。
- 記憶は、忘れかけた頃に覚え直すと深く定着する。間隔を空けた学習は効果的。
- 語彙は、暗記ではなく「推論」で強化すること。
- フィンランド人は英語力が高い。多くの英単語を、シンプルな文で繰り返しアウトプット練習し、定着させている。
(参考) 本書で紹介されていたコーパス・オンラインツール: SkELL / COCA / WordNet
まとめ
「英語独習法」では、非ネイティブが英語を習得する上で、語彙に重点を置き、認知科学の観点からポイントが説明されており、英語力を効率的に伸ばすきっかけが掴める可能性があります。英語学習者には一読をおすすめします。